手術に使われるタンパク質

タンパク質というのはアミノ酸が連なって出来ていて、そのアミノ酸の種類や割合、つながり方によって、実に色々な性質を持つことができます。
(参考記事:「タンパク質をCGで書いてみる」

分子構造の単純な物質と違って、爪のように硬くなったり、筋肉のように柔らかくなったり、髪の毛のように黒くなったり、眼球の様に透明になったり・・と無限の可能性を秘めている物質なのです。(参考記事:「摩訶不思議なタンパク質」を参照)

そして実は、手術の時に使う糸にもタンパク質で出来ているものがあります。
それはいわゆる絹糸、つまりシルクの糸です。(医学の世界では「けんし」と呼ぶらしいですが)

今でこそ人工的に色々な合成素材の糸が使われるようになって来てはいますが、昔は手術といえばもっぱら絹糸と相場が決まっていたんだとか。

そもそも人間の体は、体の外から入ってきたものを「異物」として攻撃する「免疫」という機能を持っているため、縫い物などに使う木綿などの糸では内臓や皮膚などを縫う事ができません。

手術

だから 絹糸の場合は比較的その反応が起こりにくい(ゼロではありませんが)ため、古くから手術用の糸として用いられてきました。

しかも絹糸は値段が安くて縫合の時に結びやすいという特徴を持っていたため、人工合成の糸が作られるようになってからも、しばらくは手術糸の主役として長い間活躍し続けてきたのです。

しかし、そんな絹糸も人工合成された糸に比べると拒否反応や感染症を起こす確率が高いこと、また合成糸の性能が良くなって値段も安くなってきていることなどを理由に、最近はあまり使われなくなって来ているようです。

手術を受けたことのある人は分かるかもしれませんが、最近は溶けて体に吸収される「吸収糸」や体内での耐久性に優れた特殊糸などがどんどん開発・使用されてきています。

いずれ絹糸が手術に使われていたという事実は「昔話」になる時が来るのかもしれませんが、長年医療を支えてきたタンパク質糸の功績は、実に大きいと言えるのではないでしょうか。

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