ペンギンと筋肉の話

皇帝ペンギンのオスは、ヒナの卵が孵るまでのあいだ、ただじっと立って卵を温め続けます。

卵がヒナになるには数ヶ月という結構長い期間が必要ですが、その間食事をすることも無く、暖かい場所を求めて移動するわけでもなく、じっと寒さに耐えながらお腹の羽毛で卵を包んで温めつづけるんだそうです。

やがて皇帝ペンギンのお父さんの努力は実り、大きな卵の殻を破ってヒナが顔を出します。
そして人間の赤ん坊と同じように、生まれたヒナにはさっそく栄養が必要になります。

しかしペンギンのお父さんは、ヒナを寒空の下にさらしてエサを取りに行く事など出来ようはずもありません。

ペンギン

お母さんペンギンが帰ってくるまで、ヒナを守らなくてはならないのです。

そこでペンギンのお父さんは、自分の胃壁や食道の粘膜を分解し、それを「ペンギンミルク」としてヒナに与えてやるんだそうです。

美しき自己犠牲。
なんとも感動的な話です。

さて、人間の筋肉も脳から「動け」という命令が出るまでは、ただじっとその場で待ちつづけます。

筋肉が運動している時間と言うのは人間の生活の中でそれほど長くはないので、結果として随意筋たちは勝手に動き出すこともなく、せいぜい寒い時に勝手に収縮して体を温めるくらいの役割を果たしながらじっと活躍の機会を待っているのです。

やがて休養の時間が終り、筋力トレーニングやスポーツなど筋肉たちがその存在意義を発揮できる時間が訪れます。

そして運動を終えた筋肉たちには、さっそく疲労回復&超回復のための栄養が必要になります。

しかし筋肉は消化器官でもなければ脳の様に体に指示を出す機能も持ち合わせていないので、能動的に栄養を摂取することなど出来るはずもありません。

人間自身が食事をしてくれるまで、じっと待たなくてはならないのです。

しかも空腹になると、脳や内臓など他の組織も栄養を求めている状態になります。

そこで筋肉たちは、自分自身を構成するタンパク質を分解し、それを「糖新生」によってエネルギーとしてとして他の組織に供給するのです。

美しき自己犠牲。
なんとも感動的な話です。

・・・さて、なんとなく筋肉が可愛らしく思えて「運動後はすぐに栄養補給しよう!」という気分になってきたでしょうか?(笑)

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