呼吸商の話
生物学の分野で登場する用語に「呼吸商」というのものがあります。
最後に商と付くので古物商のような資格とか商売の種類のような印象を受けるかも知れませんが、そうではありません。
また、能代商のような野球の名門校の略称でもありません(笑)。
ここでいう商というのは数学で割り算を行って「商を求めよ」というときの商です。
で、何の割り算なのかというと、栄養素を体の中で燃焼したときに吐き出される二酸化炭素の量を消費する酸素の量で割るという計算になります。
一応高校の生物学で習うもの(世代のギャップがあるので、今はどうかわかりませんが)なので、ご存じの方もいるとは思うのですが、
「今朝は呼吸商が低くてまいったよ~。」
というように日常生活の中で使われる事はまず無いので、忘れてしまっている事が大半だと推測されます。
さて、この呼吸商ですが、人間が体内でエネルギーとして利用する3大栄養素ではそれぞれ、
炭水化物(糖質)=1.0
タンパク質=0.8
脂肪(脂質)=0.7
という数値になっているのです。
つまり、炭水化物がエネルギーとして一番活用しやすい(いっぱい酸素を吸わなくても燃えてくれる)で、我らがタンパク質は0.8、そして一番エネルギーになりにくいのが脂肪分ということ。
この順位は、ある一つの「不都合な真実」を含んでいます。
それは何かと言うと、内臓や筋肉の材料となり、体に残しておきたいタンパク質が、脂肪よりもエネルギー源になりやすいという点です。
ダイエットなどをするときには、できればタンパク質を残したまま脂肪分だけ減らしたい。
つまり、筋肉を残しつつ脂質を優先的に減らしたい。
それなのに、タンパク質の方がエネルギーになりやすい、呼吸商で言えば「失われやすい栄養素」なのです。
これが、ダイエットを難しいものにしている要因の一つになっているのは間違いないでしょう。
もちろん栄養代謝には色々な要素が絡んでいるので、必ずしも呼吸商だけで消費される順位が決まるわけでは無いとは思いますけどね。
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