食品の成分表示の裏事情
先日、アメリカ人の知り合いと話していた時のことです。
アメリカと言えば「裁判が盛んな国」という印象があって、実際に法廷闘争が非常に多いのも有名な話だと思います。
当のアメリカ国民もそのことについては自覚があるようで、
「こんなことが裁判になるとは!」
という話の例として牛乳に関する裁判の話をしてくれました。
その裁判というのは、乳糖不耐症に関するものです。
牛乳には「乳糖」という糖分の一種が含まれているんですが、飲む人の体質によってはこの乳糖が体内でうまく分解されないことがあります。
乳糖を分解できない人が牛乳を飲むと、お腹がやたらとゴロゴロしたり、下痢をしたりしてしまって、これが「乳糖不耐症」と呼ばれるものです。
栄養学の常識で言うと、
「牛乳に乳糖が入っている」
というのは、
「ケーキに砂糖が入っている」
のと同じくらい当たり前の話です。
一般常識で考えても、体質的に牛乳が合わないという人は、過去の経験から経験から牛乳を避けるのが普通でしょう。
それなのにアメリカでは、
「成分表示に「乳糖」と書いていないから、飲んで下痢をしてしまったじゃないか!」
と牛乳メーカーを訴えた人がいるんだそうです。
しかもその人は裁判に勝ってしまったので、それ以来アメリカの牛乳の成分表示には必ず「乳糖」と書かれているんだとか。
しかしその半面、
「それは表示しないとまずいんじゃないの?」
というような事が表示されていなかったりもします。
例えば、乳牛に対するホルモン剤の使用。
アメリカでは肉牛や乳牛を育てるときに、人工的に合成した成長ホルモンを使うことがよくあります。
それによって牛が早く成長したり体が大きくなれば、生産効率が良くなるからです。
「そんな事をして安全上の問題はないの?」
と思うかもしれませんが、案の定これについては
「発がん性など健康上の問題を引き起こす可能性がある!」
と主張する専門家もいます。
実際のところ、人工合成された成長ホルモンについてはアメリカ以外の多くの国で使用が禁止されているくらいです。
そうすると一部のメーカーは
「ホルモン剤を使っていません」
ということをウリにする製品を出すわけですが、そうすると今度はホルモン剤を使っているメーカーが、
「害があるということについての科学的根拠が曖昧なのに、そういう売り方はズルい!」
と裁判を起こしたりと、まさに泥沼状態。
結果として現在アメリカでは、仮にホルモン剤を使っていたとしても、それに対しての表示義務はなし。
そして逆にホルモン剤を使っていないことをアピールするとしても、「ホルモン剤には健康上のリスクはありません」というようなことを併記しないといけないルールになっているようです。
日本でも似たようなところがありますが、結局は「何が正しいのか」ということよりも、それそれの利害関係が衝突した結果、力関係によってルールが決められているような感じですね。
というわけで、海外に滞在したり移住したりする場合は、その国の栄養に関する事情を予め知っておいたほうが良いかもしれません。
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